調子に乗ってもうひとつだけ。
この1年半は仕事ずくめで… と前回書いたが、仕事に偏った生活をしていると、自然と意識の中心が「バランス」に向く。
健康面や食生活におけるそれは、何らかの習慣づけをしてしまえば割と快調にやっていけるものだが、問題はメンタル面。
こちらについては、公私の別をくっきりつけてバランスを図るのはなかなかどうして至難の業。仕事漬けの最中なら尚更。
美味しいものを食べるだとか、映画を観るだとか、一時的に何もかも忘れて自由な心持ちを得る方法は幾らもあるだろう。
でもできれば、能動的に何かやるんじゃなく、自然と得たいのよね。受動的に。こちとら動くのも厄介なほど疲れてまさぁ。
なんてことを、元来のものぐさも手伝って寝転がりつつ猫も転がしつつ考えていたら。
さーすーがーは私の身体。 ある時から、毎日のように魅力的な夢を私に見せるようになった。
なんという突飛で、かつ灯台もと暗し的な発想! まさに受動的。ただ横になって目を瞑るだけ。
しかも自家発電だから余計な電力や電気代も必要なし! 奥さん、こんなエコなストレス発散法、今までありましたか!?
それに見て下さい、まぶたの裏に広がるこの大画面! 今ならお好きな出演者、ストーリー、全部お付けします!!
そりゃー たかた社長も思わず声を張るというもの。私だって、なんで毎日夢を見るか考えて、まさか!?と叫んだもの。
おそらく、逃避の一種なのではあろうが、一方、ノイローゼとかから身を守るために脳が編み出した防御策とも思える。
ともあれ、その期間、夢による身体への害らしきものはなかった。実際のところ、見ているのは寝起き前の一瞬だろうし。
疲れていても朝にはスッキリ。身体も頭も。 あ〜 このワザをのりピーが持ってたらなあ… と思わずにいられない。
しかし、そうはいっても、夢を見続けることに対してひとつも不安を覚えなかったかというと、そうじゃなく。
やっぱりね、そうとう病んでるんじゃないかと、そのうち世にも奇妙な物語みたいに現実へ戻れなくなるんじゃないかと。
一時はそれなりに悩んだもんです。だって毎日フルカラーの夢を見続けるのもなんだか異様だし、なによりその世界が…
そこは、夢の中にしかない町。むかーし、高校生の時くらいから、何年かおきにたまーに出てきた町。
最初は映画館だけだったが、やがてデパートにたどり着き、回を重ねてそこの構造、売り場の配置も知り尽くして。
そして数年の時を経て、今回またそこが出てきたと。で今回は、さらに町のあちこちを探索して日々世界が拡がる、と。
完全にひとりシムシティですよ。それがほぼ毎日。その中で「あの道とこの道がつながってたなんて!」と新発見もあり。
昔からずっとその夢の町のことは気になっていたから、私としてはそりゃ楽しい。毎日そりゃ寝るのが楽しみで。
調子の良い時は、明晰夢というのか、夢の中で「これは夢だ」と自覚することがあって、話の展開をいろいろ操作したり。
あまりに楽しすぎて余計不安になり、ある時から、なるべく夢の内容を周囲の人に話すようにした。これもバランスで。
だけども、他人の夢の話ほど詰まらないものはない、って定説通り、これが伝わらない伝わらない。
夢というものの、残念にして歯がゆいところは、けして他の人と共有することができない点。これに尽きる。
いろんな人にいろんな夢の話をしたが、食いつきが良かったのは、鰻屋の前を通ったらいい匂いがしておなかが空いたんだけど、鰻屋なのに外までがんがんハワイアンの音楽を流してて、さらにはガラス戸の向こうに勝新の姿が見えたので入るのをやめた、という回と、あとは古い洋館でホラー的な展開になりそうだったので無理やり話を変えた、という回くらい。
後者の方は明晰夢の奴で、洋館の2階に通じる階段の上に明らかに怖い何者か(ジェイソンとかフレディとかそのあたり)がいるんですよ。で、今にも降りてくる気配。もし降りてきたら絶対やられる雰囲気。そしてさぁ、ついに一段… その時!
よっぽど怖かったんでしょうねぇ。恐怖のあまり逆ギレして。「人の夢で何こわい思いさせてくれるんじゃー!!」
「こんな展開、ぜっったい許さん!!」 心の中で強くつよーく念じたら。
途端に目の前の風景がピタリと止まって、上から映画のエンドロールみたいなテロップが流れてきましてね。
そう、殺人鬼が降りてくる前に話を終わらせたんです。ギリギリで。無理くり。殺人鬼の立場も考えずにね。
そんな番外編的展開もあったが、基本的には平和な夢の町。どうも宮崎と広島と、あと熱海あたりをモデルにしてるよう。
実際にはないのだけど、夢の中では現実(起きた世界)にもあると信じている。この先いつかどこかで出会ったりして。
ただここ最近は、仕事の先行きが見えてきたせいかあまり見なくなってきた。やはり当時のストレス発散法だったのかも。
ちなみにそこまで仕事で追いつめられていたわけではない。ものぐさレベルにはきつかった、ぐらいじゃないか。
なので多分私には寸刻みで動く首相などの職は向かないだろう。もしなったら目を開けたまま白昼夢を見る自信がある。